新型コロナウイルスの影響で延期されたリヴァプール対リーズ戦。
試合最序盤、リーズが久しぶりにプレミアリーグに戻ってきたシーズンの開幕戦を思い出すようなハイプレスを浴び、改めていいチームだと感じる。
前半、ロバートソンのクロスがペナルティエリアで相手ディフェンダーの手にあたり、PK。サラーの左隅へのキックで先制する。
その後、中盤のビルドアップで下りてきたサラーがファビーニョからのボールを受けたとき、後ろに戻すなら、いくらでも選択肢があった局面だった。でも、そのときサラーがパスを出したのは、自分がおりてきて空いたスペースに走り込むファビーニョだった。
リーグ優勝から遠ざかっていた期間を暗黒時代といい、クロップ監督の就任以降を黄金時代と言うなら、その両者の違いを思い出すシーンだった。
(チャンピオンズリーグを優勝したことがある期間を暗黒時代というには、躊躇もあるが)暗黒時代に、ビルドアップの局面で成功率の低いプレーを選択するのは非常に限られたプレーヤーだけだった気がする。そのプレーを選択していた選手の一人がスティーブン・ジェラードだ。
成功率が低いが、通れば点に直結するパスを出すジェラードと、安全なパスを選択しがちなその他の選手。個人的な印象でいうと、その他の選手には、そういうプレー選択が許されていなかったような印象を受けていた。
その成功確率の高い選手は、ネームバリューがあがっていき、ワールドクラスと言われるのだと思う。それを個人の資質に頼るのではなく、戦術として推奨しているのがクロップ監督だと感じる。もし、失敗してボールを失ってもまた取り戻せばよいし、もし、ボールが通れば得点のチャンスがあるからだ。
クロップ監督のプレミア初年度、試合前半は噂のゲーゲン・プレスで圧倒していたが、後半に息切れする、という展開をよく見ていた。プレミアの過密日程を経験した2年目以降のクロップ監督に感じるのは、ゴールに直結する選択を最優先するチーム戦術と、ボールを失った瞬間のプレスだった。
リヴァプールがリーグ優勝から遠ざかっていた期間の終わり頃、バルセロナのポゼッションフットボールは全盛期で、ボールを失うことを怖がっていた気がする。そんななか、個人の能力で局面を打開する選手は、ジェラード以外にもたくさんいた。特に印象に残っているのは、フェルナンド・トーレス、ルイス・スアレス、ラウール・メイレレス、フェリペ・コウチーニョだ。
ラウール・メイレレスだけ異質な感じがするかもしれないが、個人的にはトーレスやスアレスはもちろん、ジェラードまでもが怪我でいない、本当の暗黒期間に期待を持たせてくれる数少ない選手だった。ストレスが溜まる試合展開の中で、時折見せる創造性が非常に印象に残っている。もっと言えば、シャビ・アロンソ、ベナユン、ジョー・アレンやアダム・ララーナなど枚挙に暇がないが、きりがないのでやめておく。
ラウール・メイレレスの在籍期間は短かった。詳しい事情は知らないが、創造性溢れるプレーヤーにとってあの時期のリヴァプールは居心地が悪かったのかもしれない。
リヴァプールがリーグ優勝から遠ざかっていた期間に、在籍していた真のワールドクラス、スティーブン・ジェラード、フェルナンド・トーレス、ルイス・スアレス、フェリペ・コウチーニョのうち、最も同情してしまうのが、フェリペ・コウチーニョだ。
ジェラードにもチェルシー戦のスリップなど同情すべき点はあるが、ワンチームマンとして現役を過ごし、チームのレジェンドとなった選手生活を考えれば良かったんじゃないかという気もする。トーレスは、黄金時代のスペイン代表でワールドカップ優勝メンバーになっている。リヴァプール在籍時、UEFAヨーロッパリーグでアトレティコとの試合を怪我していないのに、複雑な表情でスタジアムで観戦していたことを思えば、チェルシーを経て、愛するアトレティコに戻ってプレーできたのも良かったと思う。バルセロナでもトップフォームを維持し、メッシ、ネイマールと3トップを形成したスアレスもそうだ。
スアレスが去り、ジェラードがボランチに下がり前線への影響力が低下しつつあった時から、クロップの就任初期までチームを支えたフェリペ・コウチーニョがバルセロナ、バイエルンでリヴァプール時代と同じような輝きを継続的に見せられなかったことが悔しくてならない。
CLで敵チームとして登場した時を除けば、いつも、「コウチーニョはこんなもんじゃないのに」という気がしていた。
サラーが右サイドに定着したなか、コウチーニョが左サイドで起用されていたかは疑問があるが、クロップのリヴァプールにコウチーニョが残っていたら、と思わずにはいられない。ミスした時には自分に怒り、チームメイトがミスをすれば天を仰ぐだけで直接に不満を口にしない、寡黙なブラジル人。
ジェラードが監督を務めるアストン・ヴィラにレンタル移籍した今期。4/16のリヴァプール戦は、残念ながらアン・フィールドではないけれども、個人的にコウチーニョとジェラードに拍手を送りたいと思う。きっと、現地のリヴァプールサポーターもそうすると思う。
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